かわいらしい木彫りの人形など、独自の民芸品をたくさん生み出した「農民美術」の本が発売

書籍

 素朴で可愛らしい木彫りの人形や、菓子入れや小鉢などの生活用品をたくさん生み出した「農民美術」を知っていますか?

 今からおよそ100年前、版画家の山本鼎(やまもと・かなえ)が提唱した農村部の若者たちに手工芸品の制作技術を手ほどきする運動です。

 

 手工芸品の制作は農閑期の副業となり、それまで無縁だった美術活動への参加を促しました。

 現在の長野県上田市を拠点として、農民美術練習所で作られた木彫品や刺繍・染織品等の数々はたちまち評判となり、運動は全国へと波及していきます。しかし、戦争の足音とともに徐々に衰退。戦後、長野以外の地で再興されることはありませんでした。 

 

 この「農民美術」の入門書『はじめまして農民美術 木片(こっぱ)人形・木彫・染織・刺繍』がグラフィック社から発売されます。

 

 わずか15年という短い間に全国各地で作られた木片(こっぱ)人形・木彫風俗人形を中心に、様々な制作品をその成り立ちとともに紹介。運動全体を俯瞰する解説や、同時期に作られるようになった北海道・八雲町の熊彫との関係、現在長野で作られている作品紹介など、農民美術に初めてふれる人に向けて様々な内容が収録されています。

 まとまった資料のなかった各地の農民美術の木彫人形の姿を200点収録し、地域ごとの運動の様子を記録した貴重な資料は、農民美術とほぼ同時期に始まった民藝運動や、あるいは郷土玩具などのジャンルに関心を持つ人にとっても興味深い内容となっています。

 

 かわいらしい民芸品の中にこめられた人々の思いを俯瞰しつつ、その美術作品としての豊かさにふれられるすてきな1冊です。

 

書名:はじめまして農民美術 木片(こっぱ)人形・木彫・染織・刺繍
発行元:グラフィック社
監修:宮村真一、小笠原 正
定価:1,870円
判型:A5変形
ISBN:978-4-7661-3676-0

 

タイトルとURLをコピーしました