大正~昭和のおしゃれな地図からデザインや歴史を学ぶ『吉田初三郎鳥瞰図集』が発売

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大正から昭和にかけて活躍した鳥観図絵師・吉田初三郎を知っていますか? 鳥瞰図とは、上空から斜めに見下ろしたような角度からかかれる地図のこと。空を飛ぶ鳥の目線のような図になることから、鳥瞰図と呼ばれています。

平面に描かれた地図と違い、地形や建物が立体的に見えるため、土地の様子を現実に近い形で把握することができます。

この鳥瞰図で人気を博したのが吉田初三郎。その吉田の鳥観図を集めた本『吉田初三郎鳥瞰図集』が、地図の老舗出版社・昭文社から発売されました。

地図の絵を描いていた人が画家として人気を博すというのは、現代の感覚ではちょっと不思議な気がします。

彼の人気を理解する大きな鍵は、大正から昭和初期に起こった大観光ブーム。鉄道の整備が進んだことにより、人々はこれまで以上にさまざまな地域を行き来することになり、多くの情報が求められるようになりました。そこで、わかりやすく土地の情報を捉えることができる吉田の鳥瞰図が人気を博したのです。

吉田の鳥瞰図の特徴は、現地調査に基づく細かな描写と大胆なデフォルメ、そして明るい色彩感覚にあります。

下記の図『京阪電車御案内』では、電車の路線図が地域の風景に埋め込まれるように描かれています。ところどころに描かれるピンク色の塊は桜でしょうか。地域のイメージを立体的に喚起させつつ、情報を見やすく配置するとても見事なデザインです。現代の目から見てもとても洗練されており、多くの人に刺激を与えるでしょう。

また、吉田は時事性の高い図も作成しています。

下記の図を見てください。火の手があがっているのが見えるでしょう。これは関東大震災の瞬間を画にしたもので、大阪朝日新聞の付録として発行されたもので、100万部が印刷されたそうです。

関東大震災を記録した図画や写真を見る機会は多いでしょうが、具体的な規模感を把握させてくれる図は珍しいのではないでしょうか。関東大震災での火災がどれだけ大きなものだったかよくわかります。

鳥瞰図という現在ではあまり購入の機会がない地図を通し、デザインや土地の歴史を学ぶことができる『吉田初三郎鳥瞰図集』。

一見ニッチな題材ですが、多くの人が楽しめる面白い本です。

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書名:吉田初三郎鳥瞰図集
発行元:昭文社
イラストレーション:深川優
定価:3,520円(本体3,200円+税10%)
ISBN:9784398147530

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