「アライバル」のショーン・タンの大規模個展「ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ」が横浜で開催

スタッフの体験

古い本の表紙のような、あるいは誰かの日記のような装丁の「アライバル」という絵本。

家族から離れ、慣れない土地で仕事を探し、生活を始める……。見たこともない不思議な生き物が動き回る世界に移民として訪れ、生活する男性の姿を、一切の言葉を排しながら、描いたこの絵本は、2011年3月、東日本大震災による災禍におびえる日本人に広く受け入れられ、ベストセラー絵本のひとつとなりました。

 

故郷から離れ、見慣れぬ不穏な土地で生活しながら、次第にその土地を受け入れ、なじんでいく人々の姿が言葉なく描かれているこの本が、変わり果てた東日本の様子に呆然とする日本人の心に寄り添ったのかもしれません。

以降、ショーン・タンの作品は定期的に刊行され、多くの読者を獲得してきました。

 

そんなショーン・タンの展覧会が、各地での巡回を経て横浜のそごう美術館でスタート。彼が最初に絵と文を手がけた絵本「ロスト・シング」から最新作までの原画と習作ほか、スケッチ、映像作品、変な生き物をかたどった立体作品も含め約130点の作品を展示。

 

私も直接展示会に出かけました。

 

展示は「ロスト・シング」の原画からはじまり、名作「アライバル」の制作工程の解説や原画展示。そのほか代表作「内なる町から来た話」などの原画展示。各作品のスケッチや「セミ」の立体作品など、かなりボリュームのあるものでした。

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特に印象的だったのが「アライバル」の制作工程。自分自身の姿を写真に撮り、それを参考に描いた絵を、コンピューターで取り込んで配列を考えながら制作したとか。

 

まるで奇妙な生き物が動き回る世界なのに、どこか実在した過去の歴史のように見える画面作りのもとはそのためかと感動しました。

 

また、「内なる町から来た話」では畳2畳分ほどの巨大なキャンバスに描かれた絵が、タンの世界へ浮遊させてくれるような不思議な気持ちにさせてくれました。

心がざわざわする日々の続く今の世界で、どこかしらほころびや歪みを感じさせる世界の中、それぞれの方法で生きていこうとする生き物たちを描くタンの世界にひたり、心を遊ばせたり、休めたりするのもいいかもしれません。

 

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ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ
会期:2020年9月12日(土)~10月18日(日)
時間:10:00~20:00(入館は16:30まで)
休館日:そごう横浜店の営業に準ずる
会場:そごう美術館
入場料:一般 1200円(1000円)、大学生 800円(600円)、中学生以下無料
※高校生以下、障害者およびその介護者は無料
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