2000年に発売され、愛好家の間で密かに根強い人気を誇ってきた「イヌイットの壁かけ」が増補改訂版として、先日発売されました。
カナダ在住の著者が30年以上かけて集めた素朴で美しい「イヌイットの壁かけ」をまとめたもので、シンプルなモチーフで構成されたカラフルな刺繍やアップリケで彩られ、どこか懐かしい気持ちにさせる壁掛けからは、よくよく眺めると厳しい自然の中で生きるイヌイットの人々の日常が垣間見えます。
印象的なのは、この壁かけがいわゆる古くからの「伝統芸能」ではないこと。
1950年代にカナダ政府の定住化政策や、南方から持ち込まれた病気により様変わりしていくイヌイットの生活文化を、人々が後世に伝えていくために作り始めた新しい伝統なのだとか。
アップリケや刺繍は先進国向けに作られるダッフルコートなどのハギレや糸を活用しており、押し寄せる近代化の中で新しい時代に向けて動き出すイヌイットの人々の思いをうかがい知ることが出来ます。
復刊に当たっては、「壁かけ」21点と「人形」23点が追加収録。新規で収録されたという「クリスマスの壁かけ」11点が気になりますね。
1冊の本を通して、素朴で優しい色彩感覚からうかがえる、北の人々の生活に思いを馳せてはみませんか。
書名:愛蔵版 イヌイットの壁かけ ー氷原のくらしと布絵
著者:岩崎昌子
仕様:B5変形、並製、函入り、184ページ
定価:本体2,800円+税(税込3,024円)
発行:誠文堂新光社
ISBN978-4-416-61768-7
特設サイト:https://inuit-no-kabekake.wixsite.com/home
画像引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000268.000012109.html