最近SNSを見ていると、配色カラーチャートの簡易版が1枚のイラストにまとまって描かれたものがシェアされていることが多いように思います。
この色にはこの色という組み合わせを描いたそれらのイラストは、使い方はメイク、ファッション、イラスト制作などさまざまな用途を意図して描かれています。
こうした手軽な形でもともとはプロフェッショナルが使っているようなものがシェアされていくのはなかなか面白い。特に、ファッションやメイクは際限なく購入できるモノではないのでこうした色に対する想像力を鍛えられるのはいいことだと思っていました。一方で、こうしたもともとは専門書に載っているような情報が気軽にシェアされていく時代、プロの編集者は情報の価値を高めていくのが大変だろうなと思っていたら、デザイン分野の書籍制作を手がけるエムディエヌコーポレーションがマニアックな配色専門書を出していました。
その名も『かわいい色の本 デザインと言葉の配色ブック』。
タイトル通り、「かわいい色で何かをつくりたい。かわいい色をすぐに知りたい。本書はそんな方のために、「かわいい色」にこだわって配色したイメージとキーワードで引ける配色カタログです」なのですが、内容紹介に並ぶ文字がまずスゴイ……!
〈主な内容・配色イメージ〉
■GIRLISH
まろやかなバスタイム/スイートオレンジ/パリの公園/木馬のメリーゴーランド
■CUTE
大人ロマンティック/絵本とクレヨン/カラフルボタンと/オレンジのチーク
■NATURAL
ナチュラルきれいな/草花のあつまり/うす曇りの空/高原をかけぬける
■MODERN
芳醇なワインとビターチョコ/チョコミントとアプリコットティー/サンドベージュと砂漠/レザーのブーツ
■CLASSIC
ゴールドのビーズ/星の降る夜/夜明けの街/マジックムーン
……なるほど?
いや、わかるようなわからないような。
実際中身を見てみると、配色を決めるまでの過程や色の組み合わせごとの変化が細かく描いてあり、なかなか読み応えがありそうなのですが、この発想で読者のイメージを喚起するというのはなかなか新鮮。
たしかに、実際に何かを作る時ってぼんやりとしたイメージがあって、それは必ずしも色の組み合わせではなく「レンガ造りの倉庫」とか「花柄のブラウス」だったりしますものね。
さすが、ニッチな方向性からきちんと面白い本を仕上げていくあたりデザイン書のプロは違うなとうならされた本でした。
ingectar-e 著
定価(本体1,800円+税)
菊変型判/224ページ/オールカラー
ISBN978-4-8443-6669-0