日常にひそむ美に思いをはせる・著名クリエイター14名による「ケの美」展

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2017年も残り1ヶ月。


銀座の街並みはクリスマスのイルミネーションで飾られ、とても華やかです。

歩いているだけで特別な気分になるような。まさに、ハレの日がずっと続いているような冬の銀座の街で、ちょっと変わった展覧会が開催されています。

その名もオルビス30周年記念「ケの美」展。会場はポーラ ミュージアム アネックス。プロデュースはグラフィックデザイナーの佐藤卓です。

これはいわゆる「ハレ」と「ケ」の「ケ」に着目し、そこにひそむ美を各人が浮かび上がらせようというもの。

「ハレの日」「ハレの舞台」など、特別な時間や祭事を指す「ハレ」。これに対し「ケ」は日常的な物事や時間を指します。

会場には、14名の参加クリエイターが選んだそれぞれにとっての「ケ」のものと、それにまつわるコラム。そして、身の周りのものを撮影したパネルが並んでいました。

仕事道具を並べる人もいれば、毎日使う食器を並べる人、小さいころから身に着けているクマのポシェットを並べる人もいて、展示物にまつわる物語や信念を読みながら、それらを眺めるというちょっと変わった展示でした。

展示されているものはそれぞれとても素朴で、特に目を引くわけではないのですが、街全体が常に「ハレ」状態の銀座の片隅で観ると、味わい深いものがありました。

特に目を引いたのが、プロダクトデザイナー・柴田文江による展示です。

体温計や携帯、ソファーなど身体に直接触れるプロダクトをデザインしてきた彼女は、自分自身がデザインした歯ブラシを会場に持ち込みました。

感触や口当たりにこだわって作ったというそれは、本当にシンプルな歯ブラシで、そのままで特筆すべき美しさがあるようなものではありませんが、「使う毎で軽快で、日常を共にするのも楽しく、手肌になじみ、日ましに味わいを深め、やがて愛着へと至ります」という一文が光る丁寧なコラムを読んだ後に見ると、とても印象に残りました。

それはいわゆる「美」とは違うのかもしれませんが、間違いなく美学の反映で、とてもプロダクトデザイナーらしい言葉でした。彼女がデザインしているのは大量生産可能なプロダクトですが、ハンドメイド製品の制作についても、こうした考え方はとても大切になってきますね。

日増しに「ハレ」の空気が強くなっていく年末年始、こうした日常を改めて振り返るような展示をやっているのが、とても面白い。

また、広川泰士撮影の写真によって各クリエイターの日常を彩るものや風景がとてもすっきりとおさめられているのも、まさしくレンズを通して発見する「ケの美」でした。

私にとっての「ケの美」とはいったいなんだろう?

そんなことを考えてしまう不思議な展覧会。入場無料。12月24日、クリスマスイブまで開催しています。

【展覧会】オルビス30周年記念 「ケの美」展
【会場】ポーラ ミュージアム アネックス
【会期】2017年11月17日(金)~ 12月24日(日)
【開館時間】11:00-20:00(最終入場は19:30まで)
【入場料】無料
【参加クリエイター】(五十音順 敬称略)石村由起子、緒方慎一郎、小川糸、隈研吾、小山薫堂、塩川いづみ、柴田文江、千宗屋、土井善晴、原田郁子、松場登美、皆川明、柳家花緑、横尾香央留
【公式HP】https://orbis-kenobi.com/

画像引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000238.000002061.html

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