「ちいさいおうち」の作者ヴァージニア・リー・バートンの展覧会が東陽町で開催、デザイナーとしての姿にも迫る

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「ちいさいおうち」という絵本を知っていますか?

真っ青な表紙の中央に顔の形をした小さな一軒家が描かれていて、その周りをひなぎくの花が彩るかわいらしい絵本です。

主人公は自然豊かな静かな田舎で、ずっと周囲になじんでいた“ちいさいおうち”。しかし、工業化の波が“ちいさいおうち”のいる土地にも押し寄せます。ひなぎくの花やりんごの木は引き抜かれ、高い建物が立ち、騒がしい車両が行き交う都会の街並みにとまどう“ちいさいおうち”。最後に、建物ごと移転するという形で再び田舎に戻る“ちいさいおうち”ですが、立ち並んだビルのために星の見えない夜を嘆くその姿は、どこか私たちの心に訴えかけるものがあります。

所蔵:ケープアンミュージアム

作者のバージニア・リー・バートンは、1900~60年代のアメリカを生きた絵本画家・捺染デザイナー。電動ショベルに仕事を奪われるスチーム・ショベルを描いた「マイク・ミリガンとスチーム・ショベル」や、ケーブル・カーの存続のために街の人々が選挙を行う「ちいさいケーブルカーのメーベル」、そして、地球の誕生から生命の進化までを描いた「せいめいのれきし」など、絵本を通して社会と人間、そして生命そのものを描き続けた人です。

バートンは「自分の子供のために描き始めた」という絵本の仕事のほかに、近所の主婦に向けてデザイン教室を開いていました。

自分たちの身の回りにある小動物や植物、あるいは日常の風景などを繰り返し描き、デザインに落とし込む。素朴で優しいテキスタイルを生み出したデザイン教室は、やがて老舗デパートにも買い上げられるデザイン集団・フォリー・コーブ・デザイナーズに発展していきます。

所蔵:ケープアンミュージアム

科学についての深い理解と探究を忘れず、一方で自然と共に生きる日常生活を尊ぶ。そんなバートンの世界を紹介する展覧会が東陽町のギャラリーエークワッドで開催されます。

絵本『ちいさいおうち』の原画はもちろん、フォリーコーブ・デザイナーズのためのテキスタイル、絵本やデザインのアイディアスケッチなど、日本初公開となる貴重な資料が展示されます。

撮影:光斎昇馬

絵本の展示だけでなく、その温かみのあるデザインの秘密にも触れることのできる展覧会。入場無料な上、会場装飾もかわいらしいので、小さいお子さん連れでの来場はもちろん、デザインやクラフトに興味のある方にもおすすめの内容です。

ヴァージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』
――時代を超えて生き続けるメッセージ――

開催期間:6月1日(木)~8月9日(水)
開催場所:ギャラリーエークワッド
開催時間:10時~18時(最終日は17時まで)
休館日:日曜・祝日
入場料:無料

URL:http://www.a-quad.jp/

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