1989年開館以来、多彩な展示を行ってきた横浜美術館。丹下健三氏の設計による広々とした館内が魅力の同館が、先月まで30周年記念の大規模なコレクション展「Meet the Collection -アートと人と、美術館」を行っていました。
コレクション展って何? という方もいると思うので少し説明します。美術館の展示にはおもに企画展とコレクション展があります。企画展はゴッホ展、報道写真展などのようにひとつのテーマに沿って作品を集めて展示するもの。日本で「美術館に行く」というと、たいがい企画展を観に行くことを指します。
これに対し、コレクション展は美術館がもともと所有する作品を展示するもの。基本的に企画展と並行して行われています。展示内容が固定されている館もありますが、多くの美術館では、コレクション展も時々のテーマに沿った設定で見せ方を工夫したり、企画展に併せて展示内容を変えたりしています。
今回の横浜美術館の展示では、通常は企画展に使われる館内も、すべて同館のコレクションで彩られました。また、束芋氏、淺井裕介氏、今津景氏、菅木志雄氏ら4人のアーティストを招き、各人にコレクションを活用した展示を依頼しています。
そうして出来上がった展示はとても面白いものになっていました。
まず壁の色。横浜美術館の壁は普段は薄いクリーム色で、展示作品の邪魔にならないようになっています。しかし、この展示では部屋ごとに色が塗り替えられ、展示とクリエイターの作品世界を引き立てるものになっています。
美術館の壁がこんなに大きく変化するなんて、なかなかないことですよね。壁の色がビビッドになったことで、大きく印象を変えた作品もたくさんあります。
圧巻は淺井裕介氏プロデュースの「いのちの木」。部屋いっぱいに描かれた動植物と、コレクションの混合がとても力強い。
また、立体作品の制作者・菅木志雄氏プロデュースの「モノからはじめる」も、立体物を配置しているだけなのに、なぜか絶妙なバランスで作品の力が伝わる内容で、キュレーターによる展示と、アーティストによる展示の違いを見せつけられました。
「Meet the Collection -アートと人と、美術館」はすでに終了していますが、コレクション展のこうした装飾自体は一部残されているので、この貴重な試みを目に留めておきたい人は、ぜひ9月1日までに横浜美術館に出向いてください。ちなみに、現在企画展は「原三溪の美術 伝説の大コレクション」。こちらもゴージャスな内容で、日本美術好きにおすすめです♪
会期:2019年7月13日〜9月1日
開館時間:10:00〜18:00(金土〜20:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:木曜
会場:横浜美術館
料金:一般 1600円 / 大学・高校生 1200円 / 中学生 600円
※一部展示期間が限定される作品あり
企画展チケットでコレクション展が鑑賞できるが、横浜美術館コレクション展のみの場合、チケットは一般 500円 / 大学・高校生 300円 / 中学生 100円