ものづくりの原点に立ち返れる『野中モモの「ZINE」 小さなわたしのメディアを作る』

書籍

こんにちは! 自粛要請が強くなる中、今回はちょっと立ち止まって書籍の紹介です。

 

翻訳家でライターの野中モモさんによる『野中モモの「ZINE」 小さなわたしのメディアを作る』(晶文社)。

ZINEというのは、商業的な目的を伴わない手作りの冊子のこと。コピー機で制作したチラシのようなものも、それなりに印刷にお金をかけて制作したものもZINEと呼ばれます。

 

本書は昔からZINEを研究・収集してきた野中さんが、さまざまな角度からZINEの魅力について語る本。自身のミニコミの発行やサイト制作などの経験をつづるほか、多くのZINEの制作者にインタビューしたり、ZINEの制作者が集まるイベントや、販売店を紹介したり。

 

取り上げられるZINEの中に、いわゆる有名なものはひとつもありません。その形態も様々で、おそらく会社のコピー機で作ったと思われる手書きの紙を印刷してたたんだものもあれば、しっかりカラーで印刷されたものも。

 

テーマも、ごみ置き場のかたづけの話からセクシャリティの話、政治の話までさまざま。そのどれも、自分自身の言葉で伝えたいことを伝えるということを試みています。

 

本の中で、野中さんはZINEの定義のひとつに「内容には個人の視点が打ち出されている」という点を加えています。

 

誰かにとってはどうでもいいこと、そして、お金にならないようなこと。それでも、それを形にすることで、作り手が自分自身の考えや感情を外に出すことで、少しずつ読んだ人に影響を与えたり、新しい関わりが生まれたり。

 

そうしたつながりや発見の過程も含めたZINEのおもしろさが、この本では丁寧につづられています。

 

何かを制作して販売していると、広く、大きくそれを伝えたいと思うようになります。そのこと自体は当たりまえのことですが、そうするうちにオリジナリティや本来持っていたメッセージ性(それは、たとえばこんな色が好きというシンプルなものも含みます)までもが薄くなってしまうことが、よくあります。

 

そうやって自分を見失いそうな時などに、この本はきっとものを作ることのシンプルな衝動や楽しさを思い出させてくれるでしょう。

 

直接ハンドメイドには関わりはありませんが、外出もはばかられるこの時期に、ゆっくり「ものを作ること、手渡すこと」の意味を考えることができる、ぜひおすすめしたい一冊です。

 

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