コロナ禍のイベント参加「文学フリマ」体験レポート

スタッフの体験

今回は少し趣向を変えてライターの体験談です。

全国的に感染者数の増加が止まらず、しかし、目の前のイベントやお店を止めるわけにもいかず、どの事業者も苦慮していることでしょう。

特に11月21~23日の3連休は春から夏にかけて中止になったイベントの多くが再開。運営も来場者も緊張を胸に抱えながらイベントに参加したことと思います。

実は、ライターのIも「文学フリマ」という同人誌即売会に出展者として参加しておりました。

今回は、その時の経験をレポートしたいと思います。

「文学フリマ」は2002年から開催している文芸・評論などの同人誌の販売イベントで、東京を皮切りに今では多くの地域で開催されています。一日の最高来場者数は6000人、出展者数も1000を超えるという、それなりに大規模なイベントとなっています。

しかし、今年の5月予定の東京での開催は中止に。改めて出展者数を半分以下に減らしての開催が決定。開催直前に感染者が増え続け、無事開催できるのか不安なまま22日を迎えました。

当日、出展者・来場者ともに入場前の新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)のインストールが義務付けられました。スマートフォンを持っていない場合は、連絡先と氏名を書いた紙(書式自由)の提出が求められたそうです。マスクの着用、ひたいでの体温チェック、手指のアルコール消毒も必須です。

また、会場してからの12時~13時までの1時間は入場制限が行われ、館内の来場者数が一定数を超えないように管理されていました。

この辺りは美術館・博物館などと同様でしたが、一つ印象的だったのが声出しを減らすための工夫。感染対策案内を印刷した大きなパネルをスタッフが背負い、視覚で案内することで飛沫を抑えていました。

出展のために早めに中に入るといつもの文学フリマよりはるかにゆとりのある販売スペースが確保されていました。それでも準備のためにガサガサやっているうちに相手にぶつかったりしていましたが……。

いち出展者側の対策としては、消毒液と除菌シートのわかりやすい場所への設置。そして、「見本誌を多くの人が触る」状態を防ぐため、見本にリンクできるQRコードを用意しました。

当初は「見本を見るたび必ず消毒をしてもらう」というオペレーションを考えていたのですが、共同出展者である友人の希望で取り消しに。友人と私では若干感染に対する恐怖心が違ったため、ここで少し議論になりましたが、結局QRコードでの見本の提供に落ち着きました。

私と友人は趣味の範疇での出展ですが、毎日お店を開くタイプの仕事をしている人にとっては、意識のすり合わせもコストも緊張感も段違いだろうとしみじみ感じました。

当日は紙に印刷したQRコードを掲げ、訪れた人に「見本が表示されるので読み込んでください」とお願いしました。が、このQRコード方式、ピンとこない人が多かったようでほとんど使われず。結局、相手に中身を理解してもらうために、「こちらが見本誌を手にもって中を開いて説明する」ことになってしまいました。

「多くの人が本を手に取る」ことでのウィルスの伝播は防げても、「飛沫での感染リスク」は高まってしまうという本末転倒な結果。そもそも、出展者との会話はこうした即売会の大きな魅力の一つ。それを全くしないというのは難しい。お店などを利用していると、「これはちょっとトンチンカンな対策では」と思うこともままあるのですが、人のことを笑えないなと実感しました。

出展者ごと、来場者ごとに感染対策への意識もまちまちで、何かを触るたびに手を消毒している人もいれば、全く気にせずにお金を手で受け渡そうとする人も。病弱そうな方と壮健そうな方ではやはり感覚が違うのだろうとも感じました。

そんなこんなで葛藤を抱えつつも5時間の出展が終了。

終了を告げるアナウンスには、「この状況ではたして人が来てくれるのだろうかと悩んだのですが、多くの人が楽しんでくださって感激しました」という主旨の言葉がありました。

その言葉にうなづきつつも、人が来るとそれだけ感染リスクが高まるという事実が頭をよぎり、少し複雑な気分になりました。思ったより多くの本が売れたことや、人々の本を求める熱気に触れられたのはたしかに楽しかったのだけど、本当に安堵できるのは2週間後に何もなかったと判明してからなのです。コロナ時代のイベント開催と参加の難しさを肌で実感しました。

なかなか感染者の減らない今、各イベンターや販売店はさまざまな決断を迫られていることでしょう。直接何かができるわけでもなくとも、こうした苦労を少しでも体感したものとして、誰かが苦労している時、あるいは意見を社会や政治に投げかけたい時に力になってあげなくてはと思いました。

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