新型コロナウィルスによる影響で、閉館中だった美術館や博物館。
地域によっては緊急事態宣言の解除により、すでに再開した館もあります。
ただ、当然これまでと同じ運用をするわけにはいきません。
ICOM(国際博物館会議)は、美術館・博物館の再開に向け、指針を示しています。
https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/21910
入館者数の制限、入館者の導線の管理、消毒の徹底などなど、かなり厳しい指針が示されています。
こうした制約をふまえ、各美術館はさまざまな対策が実施されています。
いち早く開館した豊田市美術館では、下記のような案内を掲げて再開。
<ご来館の皆様と美術館スタッフの感染予防のためのお願い>
- 体調がすぐれない方、発熱や咳の症状がある方は、入館を控えてください。
- 手洗いや手の消毒、マスクの着用をお願いします。
- チケットの購入や作品鑑賞の際には、2メートル前後の距離をあけてください。
なお、美術館スタッフは、必要に応じてマスク、手袋、フェイスガード等を着用しております。
<県外にお住まいの皆様へ>
当面の間、県外からのご来館をお控えくださいますようお願いいたします。
皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
再開予定のほか美術館では、このほか連絡先の記名、検温などを取り入れるところも。
しかし、こうした感染症対策を徹底して行うことにより、当然ながら来場者数の制限が必要になり、運営コストも上がります。
長い間、美術館や博物館、図書館などは来館者数を館の運営の根拠のひとつとし、その価値を行政や社会に証明するよう求められてきていました。
しかし、来館者数や売り上げが制限される中、改めて「どうして文化・芸術が人々にとって必要なのか」を、利用者も運用側も問い直す必要があるのではないでしょうか。
たとえば、落ち込んだ時に美術館で座り込んで絵画に触れていることで、少し元気を取り戻したり、博物館に保存された古い資料が土地の歴史を伝えてくれたり、図書館が逃げ場のない子どもや、一人暮らしの老人がそっと本を読んでいても構わない場所であったり。
そうした文化の意味を、ひとりひとりが言葉にすることが、これからな社会にとって大切になっていくのではないでしょうか。
自粛要請の発表時に「生活に必要な施設は開けていてほしい」という主旨の言葉がありましたが、直接的に肉体の維持に必要でなくても、わかりやすくお金が儲かるようなものでなくても、文化は私たちの生活に必要なもの。
なんといっても、日本国憲法25条には、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあるのですから。
健康はもちろん、「文化的」とはなんなのか。改めて問い直していきたいですね。