マスキングテープから琥珀糖まで…広がり続けるミュージアムグッズの奥深さを余すところなく語った『ミュージアムグッズのチカラ』が発売

書籍

 美術館や博物館の楽しみの一つ、ミュージアムグッズ。

 

 ポストカードや便箋にクリアファイルなど、昔からあるもののほか、最近はピンバッジやペーパークラフト、マスキングテープなど、さまざまなグッズが登場しています。

 

 そんなミュージアムグッズの魅力を、余すところなく書いた本が出版されました。

 

 その名も『ミュージアムグッズのチカラ』!

 著者の大澤夏美さんはミュージアムグッズをテーマに修士論文を書き、今でも個人で発行しているZINEで、ミュージアムグッズの魅力を発信している生粋のミュージアムグッズ好き。

 

 美術館や博物館だけでなく、動物園や文学館も含めた50近い施設のミュージアムグッズをさまざまな切り口で紹介しています。

 

 都内の有名美術館の定番商品をざっとおさらいした特集はあちこちで組まれていますが、この本は密度が大違い。まず「そんな施設あったの?!」というところからスタートします。

 

 世界標準のものさし「年縞(ねんこう)」を展示する福井県年縞博物館に、渡辺淳一氏と北海道の文学について展示する渡辺淳一文学館、牛の歴史について語る奥州市牛の博物館などなど、まず世の中のこんな多様なミュージアムがあることにびっくりです。

 

 登場するグッズもオオサンショウウオ型のネックピローから牛肉の模様の一筆箋までさまざま!

 館の展示品やテーマの特徴と紐づけられながら、独自のアイデアやユーモアを備えたグッズは見ているだけで楽しくなります。

 しかし、ただ可愛くて面白いグッズが並んでいるだけではないのがこの本のすばらしさ。

 

 12本にわたるインタビューでは開発にあたっての思いや、館の歴史、ミュージアムの社会的意義などについてもしっかりと話を聞いており、単なるかわいいものの羅列にとどまらない読み応えのある本になっています。石垣琥珀糖という石垣を再現した美しい琥珀糖を販売している中津市歴史博物館の「ミュージアムグッズの力を借りれば、博物館や地域の魅力をもっと遠くまで届けられる」という言葉にグッときます。

 

 本書で大澤さんは”ミュージアムグッズはただの雑貨ではありません。博物館での思い出を持ち帰るための大切なツールであり、博物館の社会教育施設としての使命を伝える手段でもあります。”と書いていますが、その意義がしっかりと伝わるものになっています。

 単なるグッズ紹介にとどまらない多面的な本。ぐっと踏み込んだミュージアムガイドとしてもおすすめの一冊です。

 

書名:ミュージアムグッズのチカラ

発行元:国書刊行会
著者:大澤夏美
定価:1,980円
ISBN:9784336071071
大澤さんのZINEが購入できる通販サイト
https://museumgoods.thebase.in/

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