コロナウィルスによる自粛要請が続く中、多くの文化施設が閉鎖を余儀なくされています。図書館・美術館・博物館……。
特に、公営の施設に関しては政府見解に沿った行動が求められ、苦しい立場に立たされています。
お金のことはもちろん、何年もかけて用意してきた企画が世に出ずに終わってしまうのはとても苦しいことです。
そんな中、リカバリーと呼ぶにはささやかな抵抗かもしれませんが、ニコニコ動画が「ニコニコ美術館」というサービスの提供を拡大しています。
このサービスは休館が相次ぐ美術館・博物館の支援のため、「ネット展示配信」をすべて無償で提供するというもの。
休止中の展示会をネット配信にし、少しでも多くの人に展示の様子を閲覧してもらうという取り組みです。
もともとニコニコ動画は「ニコニコ美術館」という、専門家の解説付きで全国の美術館の展示会場を配信するサービスを行っています。
今回の無償提供は、その経験を活かしたもの。すでにいくつかの配信が決定しています。
専門家やナビゲーターの文脈に沿った解説はもちろん、通常の展示では近づけない小さな細工などにズームアップできるのがこうした配信のよいところ。
また、混雑とは無縁なため、疲れやすく、展示の最後では集中力がもたないという人でもゆっくりと楽しむことができます。
こうしたサービスは遠方の方や身体の弱い方でも楽しめるため、なかなか自宅から出ることができない方でも、自分のペースで楽しむことができます。
私は「生」と「配信」は体験としてまったく違うものだと思っています。ですから、「配信が代わりになる」という考えはしていません。しかし、こうしたサービスのおかげで、この災禍で失った収益が少しでも回収できるのなら、そして、豊かな文化にふれることができるのなら、それはすばらしいことだと思います。
今回の災禍を乗り越え、皆が美術館や博物館に行くことができる日常が、再び訪れることを願ってやみません。