1枚の画の中に隠された名画や昔話を探し出したり、画の中に隠された不思議な仕掛けを探したり……。ユーモアと遊び心に満ちた絵本を描き続け、装丁・装画の分野でも活躍した画家・安野光雅さんが、2020年12月24日に亡くなっていたことがわかりました。
安野さんの絵を見たことがない人は、おそらくいないでしょう。淡い色調の水彩画は、絵本や装画、包装紙などをはじめとした多くの場所で愛されています。
中でも多くの人に影響を与えているのは絵本でしょう。
エッシャーの絵のようなだまし絵のアイデアを絵本の中に持ち込み、優しい色彩で描いた「ふしぎなえ」や「ふしぎなさーかす」。
世界のヨーロッパからアジアまで、世界のあちこちの国の風景を鳥観図で描き、その中に童話や名画のモチーフ等を忍ばせた「旅の絵本」シリーズ。
《なかまはずれ》《ふしぎなのり》《じゅんばん》《せいくらべ》……。数学というモチーフを通して、物事の見方や考え方を教えてくれる「はじめてであうすうがくのえほん」シリーズ。
絵本を通して、世界中の様々な場所の豊かな風景、ユーモアやアイデアのある画の面白さ、言葉では説明が難しい考え方の基礎などを教えてくれました。
今改めて読み返すと、精緻で丁寧だけど語りすぎない色彩と筆致の中に、数学的思考を画の中に落とし込む知性、文化や芸術に対する豊富な知識が伝わる細かな描写など、小さい頃には見えなかった魅力を見つけ出すことができます。
安野さんは2020年の2月、93歳で絵本「しりとり」を出版。ずっと現役の画家として仕事に向き合ってきたことがわかります。週末は彼の仕事にゆっくり浸り、童心に帰りつつ、そのプロフェッショナルな仕事に改めて向き合ってはいかがでしょう。