技術や生活様式の変化により、多くの産業が生まれ、時に消えていく昨今。消えていくもののひとつに、職人による技術や機材などがあります。前回紹介したネオン管も、職人の減少により、存続が危ぶまれています。
長らく印刷の主流であった活版印刷も数を減らしつつある産業のひとつ。鉛でできた活字を組み合わせて組版を作成し、インキをつけて紙を載せ、上から圧力をかけることで、紙にインキを転写する印刷方法です。
その読みやすさや美しさから、長く高い人気を誇る印刷方法でしたが、生産コストの高さなどもあり、80年代には写真・電子技術を用いるオフセット印刷にとってかわられています。
しかし、その独特の味わいは今でも根強い人気があり、割高を承知で名刺や招待状などを活版印刷で頼む人も少なくありません。
そんな活版印刷の事業を次に引き継ぎたいと思い、クラウドプラットフォームで継承者を探している会社があります。福岡市で50年近く活版印刷業を営んでいる「文林堂」です。
時代の変化により、一度は先代から引き継いだ活版をすべて手放したという店主の山田善之氏。しかし、約15年前、廃業した印刷所などから再度活字や道具を集め直し、活版印刷の事業を再開しました。手作業で行う活版印刷は手間がかかり、一度にたくさんの作業を受注できません。しかし、口コミやワークショップなどの力もあり、多くの人に愛される安定した経営を営んできました。
今回の事業継承では、「文林堂」という伝統のある名前や場所、機材の引き継ぎが可能となります。別の用途としても活用可能ですが、の山田氏は活版印刷の継続を望んでおり、そのためのサポートは惜しまないと話しています。
山田氏は「私自身は、活版印刷を仕事にしてきて、すでに十足しています。100%を超えるくらいやりきりました。譲りたい人の中には、名前や機材だけを譲って欲しいといった条件があると思いますし、私もそこにあまりこだわりはありません。年齢的にも、私一人でずっと続けるのは難しいので、活版印刷を辞めて引き取り手もいなければ、集めた活版などは処分するつもりです。
私の希望は、誰かが活版印刷を続けてくれることです。小学生でも使える機械もあるので、それを使ってまずは小さく始めることもできます。もし本格的にやりたいという人が現れれば、一つずつ、しっかりと指導していきますよ」
と語っており、これまで自身が受け継ぎ、蓄えてきた活版印刷という文化の継承について、積極的な姿勢を見せています。
クラウドプラットフォームrelayでは、文林堂の事業継承案内のホームページが用意されています。
技術の継承は文化の担い手にとって大きな課題となっていますが、こうした形で望む人と技術が繋がることができれば、こんなにすばらしいことはありませんね。
今の時代だからこそ、活版印刷が持つ手作りの良さを引き継ぐ後継者を募集しています!
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