それぞれの今を聞いてみるvol.3 「gallery fu」

インタビュー

コロナ禍の中で活動するアーティストや裏方の人々に話を聞く「それぞれの今を聞いてみる」。

 

今回は横浜市のギャラリー「gallery fu」の代表の鈴木智惠さんと、島倉研治さんに、コロナの影響と現状について話を聞きました。

gallery fuは現代アートを中心に、絵画から立体までさまざまな分野の作品を扱うギャラリーです。元町や中華街といった観光地にほど近い立地ながら、周りを個人宅に囲まれたのどかな場所にあり、展示室のほか、カフェスペースとアート小作品販売スペースが併設されているので、作品を楽しんだ後は雑貨を眺めながらくつろぐこともできます。

 

gallery fuがコロナウィルスへの対策を始めたのは、2月末の展覧会から(2月21日~3月1日の「TRAIN×KANAGAWA」)。アルコールでの手指消毒とマスクの着用を開始し、トークイベントでも登壇者のマスク着用を義務付けるなどの対策を行ってきました。しかし、この時点では中止や延期は検討せず、ドアをすべて開き、換気扇を回しながら開廊していたそうです。

東京のギャラリーを中心に、中止や延期の報が増え出したのが3月初頭。gallery fuでも、3月はトークイベントを中止しました。その後、3月20日~4月5日の展示(武蔵安里・田中綾子二人展「記憶の交換」)は実施を決定したものの、一部時間を短縮。最終的には会期も4月3日までに短縮することになりました。

 

3連休後の3月23日からは客数も減り、アーティストもSNSで「くれぐれもご無理なさらないように」と発信するようになるなど緊張感が高まり、4月8日から休業アナウンスをすることに。アーティストとのスケジュール調整が始まり、現在のところ1つの展覧会は中止に、そのほかのスケジュールを6月中旬以降に延期しました。

 

そして、4月30日までのつもりでアナウンスした休業は、最終的に5月31日まで伸び、6月16日にやっと新しい展示「The Hope Flowerー願いの花ー」の幕が開きました。

休業期間中は、短縮開催になってしまった「記憶の交換」の紹介動画を作成したり、次の展示の準備をしたりとあれこれ対処していたものの、いつから再開できるかわからない状況でなかなか手が進まなかったといいます。

https://www.youtube.com/watch?v=jOACZXwtrkA

鈴木さんは「でも、アーティストのほうが大変だったと思います。いつ再開できるかわからない中で、それでも準備を進めなくてはいけない。時間はあるけれど作品に向かえない苦しさもあったんじゃないでしょうか」と話していました。

 

また、「こうなってみて、改めてgallery fuとは何かを考えました。オープン当初は子ども向けのワークショップなども開催してきたけれど、結局“体感していただく”ということを大事にしてきたということを実感しました。しかし、今はそれが難しくなってしまった」とも。

 

島倉さんも「Youtubeで動画を公開しましたが、あくまでもアーカイブ。ふれられるくらいの距離にあることが前提に作品が作られているので、良さが伝わりきらない」と語っていました。

 

アーティスト側の考えもそれぞれ。たとえば、5月1日から5月10日に開催する予定だった若手アーティスト7名による展示「七つの星」では、前半は映像配信、後半はギャラリーで見てもらうという方法も検討しました。この提案に対し、参加アーティストのうち3名は賛成、4名は反対という結果となり、ギャラリーの7周年記念企画でもあった同展示は、最終的に9月25日から10月11日に延期となりました。

 

現在は、これまでの感染対策の他、カフェの飲み物を使い捨て容器にし(アルコールのみ煮沸可能なカップを使用)、手指消毒を徹底するなどして、ギャラリーを開廊しています。展示室内の扉横に置かれた消毒液に「本当はこういうものを作品の中に置きたくないんですけどね」と苦笑する鈴木さん。

展示中の「The Hope Flowerー願いの花ー」では、油彩画を中心に、映像や音楽、ガラスの小瓶といったさまざまなモチーフが組み合わさり、穏やかな世界が作られています。コロナ禍以前よりは来廊者は少ないものの、作品の並ぶギャラリーは本来の姿を取り戻したような安心感がありました。

 

「The Hope Flowerー願いの花ー」
会期:2020年6月16日(火)~6月28日(日)
休館日:月曜日
開催時間:12:00~19:00、日曜日17:00まで。
会場:gallery fu
入場料:無料
HP:https://galleryfu.com/
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